東京23区の民泊(住宅宿泊事業)は、区ごとに営業できる曜日・期間・地域が異なる。地方自治研究機構(RILG)の整理(令和8年4月1日更新)によれば、特別区23区のうち22区が住宅宿泊事業に関する条例を制定している。北区は条例の一覧に掲載がなく、北区の公式ページでも区域・期間の制限の記載を確認できなかった。

2026年に入り、墨田区・葛飾区・渋谷区・江戸川区の条例が施行された。台東区は令和8年10月1日、豊島区は令和8年12月16日に施行を予定している。中野区・板橋区・世田谷区は改正案の意見募集の段階にある。新宿区は令和8年9月8日の区長記者会見で規制強化案を公表し、令和9年6月の条例施行を予定している。本稿は、各区の公式ページ・条例・区資料を確認し、2026年9月21日時点の内容を整理した。

注意:民泊の条例は区ごとに内容と運用が異なる。同じ区でも、届出日、家主居住型か家主不在型か、物件の用途地域によって扱いが変わる。本稿の内容をそのまま根拠にせず、事業を予定する区の保健所への事前相談と、条例本文の確認が必要です。

結論:23区の上乗せ条例の全体像

  • 制限の型は区ごとに異なる。区内全域で平日を制限する区、住居系の地域だけを制限する区、季節限定にする区、家主不在型だけを対象にする区に分かれる。
  • 2026年に施行が集中している。墨田区・葛飾区(4月1日)、渋谷区・江戸川区(7月1日)が施行済み。台東区(10月1日)、豊島区(12月16日)が控えている。
  • 届出日で扱いが分かれる区がある。台東区・墨田区・葛飾区・渋谷区・江戸川区は、施行日前の届出施設に新しい制限を適用しない旨を公表している。豊島区は既存施設にも適用する。
  • 検討中の区がある。新宿区は、住居系用途地域の原則新設禁止などの案を公表し、施行後2年間の経過措置後は既存施設にも適用する方針を示した(令和9年6月施行予定)。中野区は令和9年4月の施行を予定している。板橋区は意見募集を9月28日まで、世田谷区は10月6日まで実施している。
  • 国が条例検討の参考となる技術的助言を出した。令和8年7月15日付で、いわゆるゼロ日規制とICTを用いた管理の義務付けが整理された。

前提:民泊新法の上乗せ条例とは

住宅宿泊事業法第18条

住宅宿泊事業法(民泊新法)は、年間の宿泊日数の上限を180日と定める。あわせて、生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度で、政令で定める基準に従い、条例で区域を定めて事業を実施する期間を制限できると定める(第18条)。港区の公式ページも、この趣旨を説明している。

特別区では、区(保健所)が届出を受け付ける。区の条例は、その区に所在する届出住宅に適用される。

本稿でいう「上乗せ条例」

本稿では、区が住宅宿泊事業法に基づき独自に定める条例を「上乗せ条例」と呼ぶ。内容は大きく2つに分かれる。

  • 区域・期間の制限:特定の地域で、特定の曜日や期間に事業を実施できないと定めるもの
  • 行為規制:近隣住民への事前周知、苦情対応の記録、駆け付け体制、届出住宅の公表、指導・勧告など、事業者の行為を定めるもの

RILGの整理では、特別区の条例で行為規制を規定するもののほとんどが、近隣住民への事前説明を義務付けている。

用語:家主居住型と家主不在型

大田区・港区の公式ページの説明によれば、次のとおり区別される。

  • 家主不在型:住宅宿泊事業法第11条第1項各号のいずれかに該当する場合。管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要がある
  • 家主居住型:事業者が届出住宅に居住して自ら管理業務を行い、宿泊者の滞在中に不在とならない場合

区によっては、制限の対象を家主不在型に限る。逆に、家主居住型にも制限をかける区もある。一覧表の「例外・対象」欄で区別している。

なお、宿泊日数は「正午から翌日の正午までを1日」として数える(千代田区・台東区の公式資料)。制限期間は、千代田区・新宿区・江東区など、正午を境に定める区がある。

23区の区域・期間の制限一覧

区別一覧表

各区の公式ページ・条例・区資料の記載を整理した。「区ページに記載なし」は、本稿で確認した範囲の記載であり、例外が存在しないことを意味しない。条例本文とガイドラインの確認が必要である。

区 制限区域 営業できない期間 例外・対象 時点
千代田区 文教地区等/学校等の敷地境界線からおおむね100m/人口密集区域(条例別表の町丁。大手町・丸の内・有楽町等を除く) 上記3区域の家主居住型:日曜正午〜金曜正午
上記3区域の家主不在型(管理者常駐型・駆け付け型):全日不可
人口が密集していない区域は年180日。人口密集区域の家主居住型も年180日。駆け付け型は半径700m以内かつ10分以内が要件 区ページ更新
2026/9/10
中央区 区内全域 平日(宿泊は土曜正午〜月曜正午に限定) 区ページに記載なし 掲載
2024/5/14
港区 住居専用地域(第1種・第2種の低層/中高層)、文教地区 1/11正午〜3/20正午
4/11正午〜7/10正午
9/1正午〜12/20正午
制限の対象は家主不在型のみ 区ページ更新
2025/12/26
新宿区 住居専用地域 月曜正午〜金曜正午。住居専用地域以外は曜日制限なし(現行) 区ページに記載なし。規制強化案を令和8年9月8日に公表(後述) 現行の区ページ更新
2026/3/10
案の公表 2026/9/8
文京区 住居専用地域、住居地域、準工業地域、文教地区 日曜正午〜金曜正午 区ページに記載なし 更新
2026/9/1
台東区 区の全域(改正条例第17条) 令和8年10月1日以降の届出:平日(月曜正午〜土曜正午。祝日・年末年始を除く)。家主居住型・家主不在型とも 令和8年9月30日までの届出は実施制限の対象外。従前は、管理者が常駐しない家主不在型が平日不可
詳細記事
区ページ更新
2026/7/3
10/1施行予定
墨田区 区内全域(条例第13条) 日曜正午〜金曜正午 対象は家主不在型。届出住宅内など規則で定める場所に管理業務を行う者が常駐する場合は除く。令和8年4月1日以降に届出受理された施設が対象
詳細記事
2026/4/1
施行
江東区 区内全域 月曜正午〜土曜正午(国民の祝日の正午〜翌日正午を除く) 区ページに記載なし 更新
2026/9/7
品川区 近隣商業地域・商業地域を除く区内全域(商業系でも文教地区に該当する場合は制限区域) 営業可能日は土曜正午〜月曜正午。区ページに「平日の祝日は営業不可」の記載あり 家主居住型・家主不在型とも同じ。商業地域・近隣商業地域(文教地区を除く)は年180日 更新
2026/2/20
目黒区 区内全域 日曜正午〜金曜正午 区ページに記載なし 更新
2024/3/29
大田区 第1種・第2種の低層/中高層住居専用地域、工業地域、工業専用地域、文教地区、特別業務地区、流通業務地区、指定の地区計画区域 家主不在型は、上記の地域で実施が制限される。小学校・中学校の敷地周囲100m以内で家主不在型を新たに届出する場合は、月曜正午〜金曜正午 家主居住型は、上記の地域・期間の制限を受けない(区ページ)。特区民泊は根拠法令・要件が異なる別制度 更新
2026/4/10
世田谷区 住居専用地域 月曜正午〜土曜正午(休日の正午〜翌日正午を除く) 区ページに記載なし。改正素案あり(後述) 最終更新
2026/8/20
渋谷区 第1種・第2種の文教地区、低層/中高層住居専用地域。令和8年7月1日以降の届出住宅は、第1種・第2種住居地域、準住居地域を追加 1/7〜3/25
4/5〜7/20
8/29〜10月の第2月曜日の前の週の水曜日
10月の第2月曜日の前の週の土曜日〜12/25
改正後の例外(年180日可):自己の生活の本拠が同一建築物内・同一敷地内・隣接にあり、管理する居室が5以下(家主居住型等の個人)。6月30日以前の届出は改正前の制限 2026/7/1
施行
中野区 第1種・第2種の低層/中高層住居専用地域 宿泊できるのは金曜・土曜・日曜・国民の祝日のみ 家主同居型(ホームステイ型)の要件を満たす事業者は、区長の許可により平日も実施できる(一定の条件あり)。改正案あり(後述) 更新
2026/9/17
杉並区 住居専用地域(第1種・第2種の低層/中高層) 月曜正午〜金曜正午(休日前の正午〜休日後の正午を除く) 対象は家主不在型 更新
2026/9/10
豊島区 区内全域(令和8年12月16日から)。住居専用地域・住居地域・準工業地域・文教地区(区内約70%)は新規開設不可 春休み(3/15〜4/10)、夏休み(7/1〜8/31)、冬休み(12/15〜1/14)に限定。年120日 既存施設にも適用。区域・期間の制限に違反した者には5万円以下の過料。現時点では区域・期間の制限なし 12/16
施行予定
北区 区域・期間の制限の記載を確認できなかった。北区ガイドライン(要領)に基づき、届出手続と事業者の業務が定められている 更新
2025/11/11
荒川区 区内全域(条例第3条) 月曜正午〜土曜正午(国民の祝日の正午〜翌日正午を除く) 事業者(管理業務を委託する場合は管理業者)は、届出住宅からおおむね1km以内の営業所等に常駐する(条例第8条) 区ページ更新
2023/12/8
板橋区 住居専用地域(第1種・第2種の低層/中高層) 日曜正午〜金曜正午(祝日の前日の正午〜翌日の正午を除く) 住宅宿泊事業者が自ら管理業務を行うもの(家主居住型)等、苦情等に即時に対応できるものは対象外。改正案あり(後述) 区ページ更新
2025/9/18
練馬区 住居専用地域(建物が建っている土地の過半が住居専用地域の場合) 月曜正午〜金曜正午。金曜正午〜月曜正午、祝日の前日の正午〜翌日の正午は営業可 区ページに記載なし。RILGの整理には田園住居地域の記載があるが、区ページでは確認できなかった 更新
2026/9/11
足立区 住居専用地域(第1種・第2種の低層/中高層) 月曜正午〜金曜正午。祝日の正午〜翌日正午は可。ただし12月31日正午〜1月3日正午は実施不可 区ページに記載なし 条例ページ更新
2020/4/23
葛飾区 商業地域以外(商業地域は管理方法を問わず年180日) 管理業務を行う者が常駐しない場合:月曜正午〜土曜正午(国民の祝日・年末年始を除く) 事業者または管理業務を行う者が常駐する場合は年180日。令和8年4月1日前に届出した施設は、当分の間、この規定を適用しない 2026/4/1
施行
江戸川区 第1種・第2種の低層/中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域、田園住居地域(条例第6条) 制限区域では全ての期間、実施不可 例外あり(同一建築物内等への居住、宿泊中に不在とならない場合、居室5以下で自ら管理する場合)。区の案内では、管理業者管理型は住居専用地域・住居地域で新規開設不可(既存施設は当面適用しない) 2026/7/1
施行

出典は、各区の公式ページ・条例・区資料である(末尾の参考一覧を参照)。大田区の制限期間・地域の区分は、区ページの記載による。RILGは、大田区の住居専用地域等の制限を「全ての期間不可(家主不在型)」と整理している。

制限の型で見る

一覧表の内容を、制限の型で並べ替えると次のとおりである。

区内全域(または商業系の地域を除く区内全域)を制限区域とする区

  • 中央区:土曜正午〜月曜正午のみ
  • 江東区・荒川区:月曜正午〜土曜正午は不可(祝日を除く)
  • 目黒区:日曜正午〜金曜正午は不可
  • 墨田区:日曜正午〜金曜正午は不可(家主不在型が対象)
  • 台東区:令和8年10月1日以降の届出は平日不可
  • 品川区・葛飾区:商業系の地域を除く区域を制限(葛飾区は管理業務を行う者が常駐しない場合)

住居系の地域を制限区域とする区

  • 住居専用地域:新宿区、世田谷区、中野区、杉並区、板橋区、練馬区、足立区
  • 住居専用地域に加え住居地域等:文京区(住居地域・準工業地域・文教地区)、渋谷区(令和8年7月1日以降の届出は住居地域・準住居地域を追加)、江戸川区(住居地域・準住居地域・田園住居地域)

季節・期間で限定する区

  • 港区:3つの期間が不可。営業できるのは3/20〜4/11、7/10〜9/1、12/20〜1/11の正午を境とする期間(家主不在型のみ対象)
  • 渋谷区:制限区域で、年間4つの期間が不可
  • 豊島区:令和8年12月16日から、区内全域で春休み・夏休み・冬休みに限定(年120日)

家主不在型・管理形態で区別する区

  • 千代田区:家主不在型(管理者常駐型・駆け付け型)は、文教地区等・学校等周辺・人口密集区域で全日不可
  • 大田区:家主不在型が、指定の地域で制限される
  • 江戸川区:制限区域の全期間不可。ただし居住等の例外要件がある
  • 港区・杉並区:制限の対象は家主不在型のみ

区域・期間の制限を確認できなかった区

  • 北区:区の案内ページに記載がない。北区ガイドライン(要領)と、事前周知等の手続の確認が必要

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事前周知の期限と範囲

届出前の近隣住民への周知・説明について、期限の起算点と方法は区ごとに異なる。特に渋谷区は、令和8年7月1日以降の届出について、周知の期限を届出日の60日前までに改めた。

区 周知の期限・方法(区の公表資料) 範囲(記載がある区)
千代田区事業開始日の15日前までに、説明会・戸別訪問・文書等で説明し、同意を得るよう努める敷地境界線から15m以内の建築物の住民等、地域関係者(町会等)
中央区届出の7日前までに、説明会の開催など周辺にお住まいの方々
港区届出の14日前までに、書面で周知近隣住民等
新宿区届出の7日前までに、書面で周知し、区に報告(案:周辺住民を対象とした説明会の実施を義務付け)近隣住民
文京区届出の15日以上前に、区が定めた事前周知書を配付近隣住民
台東区届出をしようとする日の15日前まで周辺地域の住民および学校等
墨田区届出をする前日までに、説明会の開催または戸別訪問で説明。説明会等の5日前までに書面で周知敷地からの距離が20m以内の範囲(条例第2条)
江東区書面での事前周知(日数は区ページで確認できず)近隣住民
品川区事前周知が必要(日数は区ページで確認できず)周辺住民
目黒区届出をしようとする日の15日前まで届出住宅の周辺地域の住民
世田谷区書面等による事前周知。事前周知内容記録書を届出に添付(日数は区ページで確認できず)区ガイドライン第3の2に記載
渋谷区令和8年7月1日以降の届出:届出をしようとする日の60日前まで(改正前は7日前)区の案内資料で確認
中野区届出の7日前までに、書面等で周知。制限区域内の家主不在型は説明会も開催周辺住民等(区の資料に範囲の記載あり)
豊島区届出の14日前までに、書面周知および説明会敷地境界線からおおむね20m以内の建物に居住する者等
北区書面等による事前説明を行い、事前周知記録書を保管周辺住民等
荒川区届出の7日前までに周知し、区に報告近隣住民(規則で定める範囲)
練馬区届出の15日前までに説明。説明会を行う場合は7日前までに通知近隣住民
足立区届出の7日前までに、書面で説明周辺住民
江戸川区説明会の開催または戸別訪問による対面での説明周辺住民等(規則で定める範囲)

大田区・杉並区・板橋区・葛飾区は、本稿で確認した区ページから周知の日数を特定できなかった。板橋区は、改正案で「届出の14日前までに説明会の開催または対面による説明」を条例に規定する案を示している。各区とも、ガイドラインや規則に詳細が定められている場合があるため、事前相談での確認が必要である。

2026年の施行・改正スケジュール

令和7年12月から令和9年4月にかけて、区の条例の施行・改正が続く。2026年9月20日時点の状況は次のとおりである。

日付 区 内容 状況
令和7年12月15日 豊島区 手続きルールの強化(周辺住民への事前説明会、国内代理人の選任、町会加入の協議など) 施行済み
令和8年4月1日 墨田区 住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例の施行。家主不在型の平日営業を制限。周辺住民等の範囲を敷地から20m以内と規定 施行済み
令和8年4月1日 葛飾区 住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例の施行。常駐しない場合の平日営業を制限、毎日の巡回などを規定 施行済み
令和8年7月1日 渋谷区 制限区域の拡大、特例要件の変更、事前周知を60日前までに変更 施行済み
令和8年7月1日 江戸川区 住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例の施行。住居系地域の制限、事前説明の義務化など 施行済み
令和8年10月1日 台東区 改正条例の施行。届出住宅の平日営業を制限、指導・勧告・業務改善命令の新設 施行予定
令和8年12月16日 豊島区 区域・期間の制限の施行。区内全域で春夏冬の休み期間に限定(年120日)、既存施設にも適用 施行予定
令和9年4月 中野区 条例改正の施行を予定。令和8年10月頃に意見の結果を公表し、第3回定例会に改正案を提案する予定 施行予定
令和8年10月:パブリックコメント
令和9年2月:議案提出
令和9年6月:条例施行
新宿区 住宅宿泊事業のルール見直し(案)を令和8年9月8日に公表。いずれも区の資料に記載の予定であり、案の内容と時期は変更される可能性がある 施行予定
意見募集:令和8年9月12日〜28日 板橋区 住宅宿泊事業を実施する区域及び期間の制限を定める条例の改正案。施行時期は、公表された概要資料では確認できず 検討中
意見募集:〜令和8年10月6日 世田谷区 住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例の改正素案。施行時期は、公表された概要資料では確認できず 検討中
意見募集:令和8年1月5日〜19日 千代田区 住宅宿泊事業条例の一部改正素案。区の条例・ガイドラインのページ(9月10日更新)は、管理者常駐型を全日不可とする表示になっている。改正条例の施行日は本稿では確認できず 要確認

改正案の内容(新宿区・中野区・板橋区・世田谷区・千代田区)

各区が公表した案の内容は次のとおりである。案の段階であり、内容と施行時期は変更される可能性がある。

  • 新宿区(令和8年9月8日公表、参考資料6「住宅宿泊事業および旅館業における新たなルールについて」):住居系用途地域は原則新設を禁止する。特例規定として、家主同居・居住型の場合は年間120日(春・夏・冬休み期間)のみ営業可とする。商業系用途地域は年間120日のみ営業可とする。これらは、施行後2年間の経過措置を設けたうえで既存施設にも適用する。あわせて、対面でのチェックインと、周辺住民を対象とした説明会の実施を義務付ける。スケジュールは、令和8年10月にパブリックコメント、令和9年2月に議案提出、6月に条例施行予定である。
  • 中野区:制限区域に第1種住居地域・第2種住居地域・準工業地域を加える。制限区域内は、家主同居型の許可要件を満たすものだけを届出可能とする。この規制は既存施設の事業者に遡及適用しない。廃棄物処理業者との契約書等の提出義務は、既存施設にも遡及適用する。違反施設の公表も規定する。
  • 板橋区:区内すべての地域を制限区域とし、家主同居型等の形態に限り制限期間中の事業実施を可能とする。制限期間(日曜正午〜金曜正午。祝日の前日午後から当日午前を除く)は変更しない。この規制は既存施設の事業者に遡及適用しない。事前周知(14日前まで)、標識、廃棄物処理、駆け付け、苦情記録、国内代理人の選定、指導・勧告・違反者公表を条例に規定する。
  • 世田谷区:住居専用地域で、家主居住型等で条件に合った場合に限り平日の事業を可能とする(年間180日まで)。あわせて、標識の掲示、周辺住民等への事前周知、廃棄物の適正な処理、緊急時の駆け付け要件(駆け付け時間等は規則で定める)を規定する。
  • 千代田区:素案は、文教地区等・学校等周辺・人口密集区域の管理者駆け付け型・管理者常駐型を全期間制限に変更し、周知対象を「施設周囲10メートル以内の建築物の所有者及び周辺住民」から「周辺住民及び地域関係者」に拡大するものである。

新宿区の案の範囲について:新宿区の資料は、原則新設を禁止する区域を「住居系用途地域」と記載している。禁止の対象となる用途地域の具体的な範囲(住居地域・準工業地域・文教地区に及ぶかなど)は、区長説明要旨と参考資料6からは確認できない。日本経済新聞(2026年9月7日・8日)は、住居専用地域・住居地域・準工業地域・文教地区などを対象とし、既存施設は2029年6月から適用と報じているが、これは区の資料に記載のない内容を含む報道である。条例案の公表とパブリックコメントの資料で確認する必要がある。旅館業についても、小規模施設の新設禁止、フロントの設置と従業員の常駐、対面でのチェックイン、周辺住民への説明の義務付けが案に含まれている。

既存施設・届出日の扱い

台東区・墨田区・葛飾区・渋谷区・江戸川区は、施行日前の届出施設に新しい制限を適用しない旨を公表している。この場合、「いつ届出をしたことになるか」が営業できる曜日を左右する。各区が公表している扱いは次のとおりである。

区 既存施設・届出日の扱い(区の公表)
台東区 令和8年9月30日までの届出は、実施の制限の適用対象外。指導・勧告、業務改善命令、違反者公表は既存施設にも適用。届出日は、形式上の要件に適合している届出書類一式の全てが保健所に到達した日
墨田区 令和8年4月1日以降に届出が受理された施設が対象。届出日は、届出書類一式が要件に適合して到達した日。書類に不備があり再提出した場合は、再提出日が届出日になる例を区が示している
葛飾区 令和8年4月1日前に届出した施設は、当分の間、実施の制限の規定を適用しない
渋谷区 令和8年6月30日以前の届出住宅は、7月1日以降も改正前の制限が適用される
江戸川区 令和8年6月30日までに届出がなされた住宅は、経過措置により条例第6条の制限が適用されない。届出書が6月30日までに区に到達し、要件に適合していれば、届出番号の通知や標識の交付が7月1日以降でも6月30日までに到達したものとして扱う
豊島区 区域・期間の制限は既存施設にも適用される。12月15日以前に届出申請していても、届出の受理が12月16日以降になると、営業できる区域が制限される場合がある
新宿区(案) 住居系用途地域の原則新設禁止と、商業系用途地域の年間120日制限は、施行後2年間の経過措置後に、既存施設にも適用する案(区の参考資料6)
中野区・板橋区(案) 区域拡大等の規制は既存施設に遡及適用しないとする案(廃棄物関係の書類提出は既存施設にも適用する旨を中野区が明記)

届出の受理は、書類の不備がないことが前提です。豊島区は、多数の届出により標識の交付まで3か月以上かかる場合があると案内している。台東区・墨田区・江戸川区・渋谷区は、届出日の考え方や期限の逆算方法を公表している。施行日の直前に届出を検討する場合は、書類の到達日と不備の有無の扱いを、事前に区へ確認する必要がある。

国の技術的助言(令和8年7月15日)

令和8年7月15日付で、厚生労働省・国土交通省・観光庁は、特別区を含む住宅宿泊事業の主管部局長宛てに「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」を通知した。観光庁の報道発表による。

通知の内容

  • 位置付け:地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言。条例の検討にあたって参考にするよう示されている。内容は、今後、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)に反映する予定とされている
  • ゼロ日規制:届出住宅に係るゼロ日規制は、それぞれの自治体の判断で、合理的に必要と認められる限度において行うことは可能とされた。例として、住宅地や教育施設等の周辺で、新たな住宅宿泊事業の実施を禁止する、または営業可能日を土日祝前日等に制限することが挙げられている
  • 整合への留意:都市計画の立地規制や、旅館業法に基づく教育施設等の周辺の許可運用など、関連する規制との整合に留意するよう示されている。例として、住宅地の静穏な居住環境を保護するために住宅宿泊事業を規制する際は、簡易宿所等も同様に規制するといった整合の確保が挙げられている
  • ICTを用いた管理:騒音計や出入口のカメラの設置、モニタリング、一定期間(過去1年分など)のデータ保存などを、条例で義務付けることが考えられるとされている

この通知は、条例の制定や改正を各区に義務付けるものではない。各区が条例を改正するかどうか、内容と時期は、各区の公表で確認する必要がある。なお、特別区長会で賛同した21区の区長が連名で、住宅宿泊事業の適正化に関する要望書を令和8年5月27日に自由民主党へ提出したと、墨田区が公表している(世田谷区・杉並区を除く)。

届出前の確認ポイント

事業を予定する物件について、次の点を順に確認する。

  • 用途地域・文教地区・地区計画:新宿区・文京区・港区・大田区・渋谷区などは、用途地域や文教地区で制限区域を定めている。各区の都市計画情報のページで確認する。千代田区は、学校等の敷地境界線からおおむね100mの範囲や、条例別表の町丁も区域になる。大田区は、小学校・中学校の敷地周囲100m以内も確認する
  • 家主居住型か家主不在型か:区によって、制限の対象や例外の要件が異なる。港区は、自己の生活の本拠として使用する住宅で事業を営む解釈運用を示し、届出者本人の住民登録を求めている。江戸川区は、家主管理型を住居専用地域・住居地域で始める場合、3か月以上前からの居住を求めている。中野区は、家主同居型の許可制を設けている
  • 届出日:施行日の前後で扱いが変わる区では、届出書類一式の到達日を確認する。不備がある場合の扱いも確認する
  • 事前周知の起算点:渋谷区は60日前まで、豊島区・港区は14日前まで、千代田区・台東区・目黒区・練馬区・文京区は15日前までなど、区ごとに異なる
  • 管理者の常駐・駆け付け:千代田区は半径700m以内かつ10分以内、台東区・豊島区は30分以内の駆け付けを求める。荒川区は届出住宅からおおむね1km以内の営業所等への常駐、墨田区・葛飾区は常駐の場所を定めている
  • 消防・建築・マンション管理規約:条例の制限を満たしても、消防法令、建築基準法令、分譲マンションの管理規約で実施できない場合がある。物件調査の観点は、旅館業許可が取れない物件の特徴の記事でも整理している
  • 旅館業との比較:旅館業法施行条例も、千代田区・墨田区・台東区・江東区・葛飾区・渋谷区・目黒区・中野区・板橋区・世田谷区・新宿区などで、改正や検討が公表されている。旅館業の営業許可を選ぶ場合も、区の条例と保健所の運用の確認が必要である。詳細は各区の公表を確認する
  • 制度の違い:大田区の特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)は、住宅宿泊事業とは根拠法令と要件が異なる。本稿の対象外である

本稿で確認できなかった事項

次の事項は、本稿で確認した公式資料から特定できなかった。自治体ごとに運用が異なるため、事前確認が必要です。

  • 千代田区:住宅宿泊事業条例の改正の施行日と経過措置
  • 板橋区・世田谷区:改正の施行時期(意見募集の概要資料に記載なし)
  • 新宿区:規制強化案の詳細(原則新設禁止の区域の具体的な範囲、家主同居・居住型の特例の要件、既存施設への適用開始日、条例案文)
  • 品川区:祝日の扱い(区ページに「平日の祝日は営業不可」と記載)と条例本文の照合
  • 大田区:令和8年4月1日の規則・ガイドライン改正の内容
  • 練馬区:田園住居地域の扱い(RILGの整理と区ページの記載が異なる)
  • 北区:区域・期間の制限を定める条例の有無(区ページに記載なし。RILGの一覧に掲載なし)
  • 事前周知の日数:江東区・品川区・世田谷区・大田区・杉並区・板橋区・葛飾区
  • 各区の家主居住型に対する例外の有無(区ページに記載のない区)

まとめ

  • 東京23区のうち、RILGの整理(令和8年4月1日更新)で条例を制定しているのは22区。北区は区域・期間の制限を確認できなかった。
  • 制限の内容は、区内全域の平日制限、住居系地域の制限、季節限定、家主不在型のみの制限など、区ごとに異なる。
  • 墨田区・葛飾区(4月1日)、渋谷区・江戸川区(7月1日)は施行済み。台東区(10月1日)、豊島区(12月16日)、中野区(令和9年4月予定)が続く。
  • 台東区・墨田区・葛飾区・渋谷区・江戸川区は、施行日前の届出施設に新しい制限を適用しない旨を公表している。届出日の考え方も区ごとに公表されている。豊島区は既存施設にも適用する。
  • 新宿区は令和8年9月8日、住居系用途地域の原則新設禁止と商業系用途地域の年間120日制限を、2年間の経過措置後に既存施設にも適用する案を公表した。現行の月曜〜金曜正午の制限は、条例改正の施行まで引き続き適用される(令和9年6月施行予定)。
  • 国は令和8年7月15日、ゼロ日規制とICT管理の義務付けに関する技術的助言を出した。板橋区・世田谷区・千代田区などの動向を含め、各区の公表を継続して確認する必要がある。

注記:本記事は2026年9月21日時点の情報に基づいて作成しています。条例・運用は変更される場合があります。施行日が到来していない内容は予定であり、変更される可能性があります。物件所在地の区の条例本文と、保健所への事前相談で必ず確認してください。

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参考法令・参考自治体

参考法令

  • 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第18条ほか
  • 地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項

国・関係機関

公式情報・参考URL(23区)