東京都台東区は、住宅宿泊事業(民泊)に関する区条例を改正し、令和8年(2026年)10月1日から施行する。10月1日以降に届出をする住宅は、家主居住型・家主不在型のどちらも、平日の営業が制限される。令和8年9月30日までに届出をした既存施設は、この実施制限の対象外である。

あわせて、指導・勧告、業務改善命令が新設され、違反者公表の対象が拡大される。これらは既存施設にも適用される。

本稿は、台東区が公表している次の資料に基づいて整理した。

  • 台東区「住宅宿泊事業(民泊)における台東区の条例を改正しました」(ページ更新日:2026年7月3日)
  • 条例改正等対策強化の概要、条例・施行規則の新旧対照表
  • 台東区「住宅宿泊事業の届出の受理と届出日の考え方」(ページ更新日:2026年9月18日)
  • 台東区「住宅宿泊事業のてびき(令和8年7月版)」

本稿は2026年9月20日時点の情報である。改正条例の施行日(令和8年10月1日)は、本稿の時点では到来していない。

改正の全体像(結論)

改正の柱は、実施の制限(期間の制限)、行政処分等の新設、違反者公表の拡大、監督体制の強化の4点である。既存施設に適用されるのは、このうち実施の制限を除く3点と読み取れる。

項目 内容 既存施設
(9月30日までの届出)
実施の制限
(改正条例第17条)
10月1日以降の届出住宅は、家主居住型・家主不在型ともに平日の営業が制限される 適用対象外
指導及び勧告
(第19条)
業務の方法の変更その他、運営の改善に必要な措置をとるよう区長が指導・勧告できる 適用対象
業務改善命令
(第20条)
指導・勧告に従わない場合、区長が相当の期間を定めて措置を命じることができる 適用対象
違反者公表
(第21条)
公表の対象を拡大(事業者に加え管理業者、業務停止命令・廃止命令を受けた者など) 適用対象
監督体制の強化 苦情電話受付窓口の開設、全届出住宅への現地調査(管理者の常駐確認等) 令和8年10月以降、順次実施

注意:民泊の条例は区ごとに内容が異なる。台東区の内容を他区にそのまま当てはめることはできないため、事業を予定する区の条例・運用を個別に確認する必要がある。

実施の制限(改正条例第17条)

1. 制限される期間

改正後の第17条は、住宅宿泊事業法第18条の規定による制限区域を「区の全域」と定める(第1項)。そのうえで、制限区域では次の期間に住宅宿泊事業を実施できないと定める(第2項)。

  • 月曜日の正午から土曜日の正午までの間
  • ただし、次の期間は除く:国民の祝日に関する法律に規定する休日の正午から翌日の正午まで/12月30日正午から翌年1月4日正午まで

区は、この制限を「平日の営業が完全に制限される」と説明している。改正後の条文には、現行条例にあるただし書き(規則で定める者が常駐する場合の例外)が置かれていない。

区の資料上、営業可能日は「土曜日、日曜日、祝日、年末年始」と示されている。宿泊が制限期間をまたぐ場合(たとえば月曜日の正午をまたぐ滞在)の扱いは、公表資料からは確認できない。予約受付の設計に直結するため、届出前に台東保健所へ確認したい。なお、台東区のてびきでは、定期報告における宿泊日数は「正午から翌日の正午までの期間を1日」として数えるとされている。

2. 改正前後の比較

区の概要資料にある、届出日と営業形態ごとの営業可否は次のとおりである。

届出日 営業形態 月曜日〜金曜日 土曜日・日曜日・祝日・年末年始
令和8年
9月30日以前
家主居住型 営業可(〇) 営業可(〇)
家主不在型 △(管理者が常駐しない場合は営業不可) 営業可(〇)
令和8年
10月1日以降
家主居住型 営業不可(×) 営業可(〇)
家主不在型 営業不可(×) 営業可(〇)

従前の家主不在型は、管理者が常駐していれば平日も営業できた。この「管理者の常駐」の要件を定めていた施行規則の規定(現行第12条)は、新旧対照表上、改正後の規則では「削除」とされている。

なお、従前の家主不在型で平日に営業できる場合とは、宿泊者が滞在する間、管理業務を行う者が次のいずれかの場所に常駐する場合である(現行の施行規則第12条)。

  • 届出住宅内
  • 届出住宅と同一の建築物内
  • 届出住宅と同一の敷地内に存する建築物内
  • 届出住宅に隣接している建築物内

3. 既存施設の扱い(経過措置)

改正条例の付則第2項は、改正後の第17条を「施行の日以後に住宅宿泊事業法第3条第1項の規定による届出をする住宅」に適用すると定める。施行日前に届出をした住宅は、「なお従前の例による」とされている。

  • 令和8年9月30日までに届出をした住宅(既存施設):実施の制限は適用されない
  • ただし、従前から管理者が常駐しない家主不在型は、平日に営業できない
  • 指導・勧告、業務改善命令、違反者公表は、既存施設にも適用される

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指導・勧告・業務改善命令の新設(第19条・第20条)

これまで台東区の条例には、区長が独自に指導・勧告し、従わない場合に命令する規定がなかった。改正条例では、次の2段階の規定が新設される。いずれも既存施設が適用対象である。

条文 内容
第19条
指導及び勧告
区長は、適正な運営を確保するため必要があると認めるとき、その必要の限度において、住宅宿泊事業者(第2項は管理業者)に対し、業務の方法の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるよう指導・勧告できる。法第15条(管理業者は法第41条第2項)の業務改善命令をすることができるときは、この規定の対象から除かれる
第20条
業務改善命令
区長は、第19条の指導・勧告を受けた者が従わないときは、相当の期間を定めて、同条の措置をとるべきことを命ずることができる

区が示している指導・処分の対象例

区の概要資料には、指導・処分の対象となる違反の例が次のとおり示されている。現地調査等で違反事実を確認した場合は、法律と条例に基づき指導・勧告を行い、従わないときは行政処分を行うとされている。

  • 法律:変更届出の提出義務違反・虚偽の届出(法第3条第4項)、宿泊者名簿の備付け義務違反(法第8条第1項)、標識の掲示義務違反(法第13条)、定期報告の提出義務違反・虚偽の報告(法第14条)
  • 区条例:苦情及び問合せへの対応等の違反(第13条。緊急連絡先の不通、30分以内の現地駆け付け対応違反)
  • 区条例:管理者の常駐義務違反(平日の営業可能施設)(第17条)
  • 区条例:平日の営業制限違反(土日祝日のみ営業可能施設)(第17条)

違反者公表の対象拡大(第21条)

従前は、法第15条の業務改善命令に従わなかった住宅宿泊事業者のみが公表の対象だった。改正後は次のとおり拡大される。既存施設も適用対象である。

改正前 改正後
法第15条の業務改善命令に従わなかった事業者 ・法第15条の業務改善命令に従わない者(事業者)
・法第41条第2項の業務改善命令に従わない者(管理業者)
・改正条例第20条の業務改善命令に従わない者(事業者又は管理業者)
・法第16条第1項の業務停止命令を受けた者(事業者)
・法第16条第2項の業務廃止命令を受けた者(事業者)

新旧対照表によると、公表する事項は、商号・名称・氏名、届出住宅の所在地、命令の内容である。改正後は、これに届出番号が加わる。

監督体制の強化(現地調査・苦情窓口)

区は条例改正と並行して、監督体制の強化を令和8年10月以降、順次実施するとしている。

全届出住宅への現地調査

全ての届出住宅に対して、年1回以上の現地調査を実施する。確認項目として、区の概要資料に次のものが挙げられている。

  • 施設周辺の状況確認
  • 標識の掲示状況の確認
  • 管理者の常駐確認
  • 緊急連絡先の稼働状況の確認
  • 30分以内の現地駆け付け対応の確認
  • 宿泊予約Webサイトの監視

無届・無許可の営業が疑われる施設についても、現地調査で実態を把握し、営業者に対して行政指導・処分を行うとされている。

苦情電話受付窓口(コールセンター)

民泊の届出住宅に関する苦情と、無届・無許可の営業が疑われる施設に関する苦情を受け付ける窓口が開設される。受付時間は月曜日〜金曜日の8時30分〜17時(土曜日、日曜日、祝日、年末年始を除く)である。

従来から変わらないルール

区は、次の内容は従来のルールから変更がないとしている。届出の準備段階で必要になる事項が多いため、あわせて確認したい。

項目 内容 根拠
事前周知 届出をしようとする日の15日前までに、周辺地域の住民及び学校等へ書面で周知する。届出時に周知実施報告書を提出する 条例第8条・第9条、施行規則第5条
周知の対象(住民) 届出住宅がある建物の使用者/敷地境界線に接する敷地の建物の使用者/道路又は通路を挟んで隣接する建物のうち、水平距離が原則15メートル以内のものの使用者 施行規則第4条第1項
周知の対象(学校等) 届出住宅がある建物の敷地境界線から敷地までの最短距離が110メートル以内で、区内にある学校・保育所・認定こども園等 施行規則第4条第2項
苦情等への対応 苦情・問合せを受けてから30分以内に現地に赴ける体制を確保する。対応内容を記録し3年間保存する 条例第13条、施行規則第8条
標識の掲示 共同住宅等では、あらかじめ管理組合等の承諾を得たうえで、法定の標識と区が交付する標識を掲示する 条例第11条、施行規則第7条
廃棄物・喫煙等 廃棄物を自らの責任で適正に処理する。喫煙方法の遵守等について宿泊者に掲示する 条例第12条・第14条

注意:台東区のてびき(令和8年7月版)の実施制限の記載は、「管理者が常駐しない届出住宅」を対象とする内容である。10月1日以降の届出分に適用される改正後の第17条は、区の改正ページ、概要資料、新旧対照表で確認する必要がある。

9月30日までの届出と「届出日」の考え方

実施の制限が適用されるかどうかは、届出日が9月30日以前か、10月1日以降かで分かれる。区は「届出日」を次のとおり説明している。

  • 届出書の記載事項及び添付書類(届出書等一式)に一切の不備がなく、形式上の要件に適合していれば、届出は受理される
  • 形式上の要件に適合している届出書等一式の全てが保健所に到達した日が「届出日」となる

9月30日までの届出について、区が示している方法と期限は次のとおりである。

届出方法 9月30日までとなる基準
民泊制度運営システムによる電子申請 システムの「受付年月日」が9月30日まで
電子申請+添付書類の一部を紙媒体で郵送 紙媒体の郵送は9月30日必着
台東保健所生活衛生課住宅宿泊事業担当の窓口に紙媒体一式を提出 窓口の受付は9月30日17時15分まで

確認したい点

  • 事前周知の期限:周知は届出をしようとする日の15日前までに行う必要がある。9月30日に届出をする場合は、単純に逆算すると9月中旬までに周知を終えていることになる。9月20日時点で周知が未了の案件が9月30日の届出に間に合うかは、日数の数え方を含め、台東保健所に確認が必要である
  • 審査の時期:区は、9月30日までに提出された届出の審査は10月1日以降になる見込みであり、届出書等一式が到達した順に審査すると案内している。標識の交付までにも時間を要している旨が示されている
  • 書類の不備:区は「書類に一切の不備がないように」と案内している。不備があった場合に届出日がどう扱われるかは、個別に台東保健所へ確認する
  • 事前相談:予約制である。9月30日までの届出に向けて相談が増え、予約が取りにくくなる見込みと区が案内している

事業者別の確認ポイント

10月1日以降に新規届出を検討している場合

  • 平日の営業ができないことを前提に、事業計画・収支計画を組み直す必要がある
  • 物件の購入・賃貸借契約の前に、届出の時期と実施制限の適用を確認する
  • マンションでは、管理規約・管理組合の承諾と、標識の掲示可否を確認する
  • 届出前に、事前周知(15日前まで)と消防署への事前相談が必要になる
  • 平日にも宿泊を受け入れる運営を望む場合、旅館業法に基づく許可は住宅宿泊事業とは別の制度である。用途地域、建築基準法、消防法、保健所の要件は異なるため、個別に調査が必要である(関連コラム参照)

既存施設を運営している場合

  • 実施の制限は適用されないが、指導・勧告、業務改善命令、違反者公表は適用対象である
  • 現地調査の確認項目(標識の掲示、緊急連絡先の稼働、30分以内の駆け付け、管理者の常駐)に対応できる運営体制かを点検する
  • 家主不在型で管理者が常駐していない場合、従前から平日は営業できない。この点の違反は指導の対象例として区が挙げている

事業者の変更・所在地の変更がある場合

  • 台東区のてびきは、事業者の変更(個人と法人の間の変更、法人の変更、相続等)や届出住宅の所在地の変更の場合、現行の事業者が廃止届出をしたうえで、新規の届出が必要と記載している
  • 付則第2項は、施行日以後に届出をする住宅に改正後の第17条を適用すると定めている。届出済みの施設を承継・法人化する場合など、新規届出が10月1日以降になるときの扱いは、公表資料からは確認できない。台東保健所へ事前に確認する必要がある

届出前のチェックリスト

  • 届出予定日は9月30日以前か、10月1日以降か
  • 周辺住民・学校等への周知は、届出予定日の15日前までに完了するか
  • 周知の対象範囲(15メートル・110メートル)を地図で確認したか
  • 消防署への事前相談を予約し、事前相談記録書に確認印を受けたか
  • 管理規約に民泊を禁止する定めがないか(分譲マンションの場合)
  • 宿泊が制限期間をまたぐ場合の扱いを保健所に確認したか

まとめ

台東区の民泊条例改正(令和8年10月1日施行)の要点は以下のとおりである。

  • 実施の制限:10月1日以降の届出住宅は、家主居住型・家主不在型ともに、月曜日の正午から土曜日の正午まで(祝日・年末年始を除く)は営業できない
  • 既存施設:9月30日までの届出分は、実施の制限の対象外。ただし従前から管理者が常駐しない家主不在型は、平日に営業できない
  • 行政処分等:指導・勧告、業務改善命令が新設され、違反者公表の対象が拡大される。既存施設も適用対象である
  • 監督体制:全届出住宅に年1回以上の現地調査が実施される。管理者の常駐、緊急連絡先、30分以内の駆け付けなどが確認項目である
  • 届出日:届出書等一式の全てが保健所に到達した日で決まる。届出時期は事業計画に直結する

台東区で届出を予定している場合は、届出日、周知の期限、物件の条件を事前に整理したうえで、台東保健所の事前相談を活用したい。

注記:本記事は2026年9月20日時点で台東区が公表している情報をもとに作成しています。条例・運用は変更される場合があります。個別の案件の取扱いは、台東保健所生活衛生課(03-3847-9403、平日8時30分〜17時)で必ず確認してください。

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参考法令・参考情報

参考法令

  • 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)
  • 東京都台東区住宅宿泊事業の運営に関する条例(平成30年2月17日条例第1号)/令和8年10月1日施行の改正
  • 東京都台東区住宅宿泊事業の運営に関する条例施行規則(平成30年3月14日規則第5号)/令和8年10月1日施行の改正

公式情報(台東区)

問い合わせ先

  • 台東保健所生活衛生課 住宅宿泊事業担当:03-3847-9403(平日8時30分〜17時)
  • 民泊制度コールセンター(観光庁設置):0570-041-389(平日9時〜17時)

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